プロレス小説「セメントマッチ―東京デンジャラス・ボーイ1」感想 - その他
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プロレス小説「セメントマッチ―東京デンジャラス・ボーイ1」感想

2010/02/27 編集
その他




まず、1巻目、「セメントマッチ―東京デンジャラス・ボーイ1」を読了。この本は、架空の登場人物と、架空の団体の話ですが、文句なしに「面白い」!!

というのも、「これは、著者が在籍していた頃の事だな」と思うような記述が著書のそこかしこに発見できるからです。

柔道界のスター、井上大樹は「セメント」を求めてプロレス界入りをした。しかし、「真剣勝負」を夢見ていた大樹にとって、「プロレス=ショー」という認識を聞かされた時、彼は愕然とする・・・・。


というのが話の流れですが、内容については読んで頂くとして・・。プロレス界の内情を「思い切り暴露」しまくっているのが本著です。著者でもある「ミスター高橋」氏は、プロレス界を震撼とさせた「流血の魔術」を過去に出版しています。

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それをも凌ぐというか、架空の団体と人物を登場させているだけにその内容には凄まじいものがあります。

例えば、新弟子として入ってきた井上が、「プロレス=ショー」とマッチメイカーから聞かされたシーン。これは「流血の魔術」の中でも触れられていましたが、「その事実を聞かされた時、どんな反応を示すか」ということまでは触れられていませんでした。本著では架空の人物ですが、それを聞かされて狼狽する井上大樹の様子が、リアルすぎるほどに描かれています。

「明日の試合だけど、相手にはもう話をつけてあるから。
裏投げ三連発からの三角締めを決めてくれ」


「えっ?相手に話をつけてあるって何のことですか?」

「柔道家も強いが、プロレスラーにはもっと強いのが大勢いる。
まるでライオンみたいな奴等の集まりだ。ライオン同士が本気で勝負したら
両方とも大怪我をする。あるいは殺してしまうかもしれない。わかるか。」


「そんなの格闘技ではないじゃないですか・・。」

「みんなこの商売でメシを食って、家族を養っているんだ。」

「それじゃあ・・プロレスは・・・・やっぱりショーなんですね。」



※本著26~27ページより引用。


おそらく、氏が団体に在籍していた時にも、こういうやり取りをしていたであろう事は容易に想像できます。とは言っても、それまで「真剣勝負」だと信じ込んできた者にとって、これほどのショックはないでしょう。

この本には本当に驚かされますが、読み物としては面白いです。まさに、新日本プロレスで長きに渡ってレフェリングを務めてきた著者でなければ書けない内容。プロレスラーとは何なのか。そして、真剣勝負の世界からショーアップの世界へ飛び込んだ井上の運命は?といったものが、あたかも現実に起こっているかのような錯覚さえ覚えます。

架空の団体と人物なのに、どこかで聞いたような人が出てくるのも特徴。物語中の架空団体「AWA」の社長、犬神真道は「イザという時には小心者」という、まるでどこぞの人物のようですが、「あの人」に「実際はこうであって欲しかった」という願望が描かれているように見えました。

「フィクション」として読めば、「リアルすぎる」内容に。「ノンフィクション」として読めば、「ここまでバラして平気なのか?」とこちらが心配するような本ですね。

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