【マンガ】「GS美神」の真の主人公は「時給255円の最強男」横島忠夫!
これまでも弱いキャラが強くなるという設定は山ほどありましたが、横島と『ダイの大冒険』のポップほどこの路線を極めたキャラクターはいないと思います。
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GS美神とは?
現代の悪霊祓い師である「ゴーストスイーパー(GS)」としての資格を持つ、美神除霊事務所の所長・美神令子。そして美神の美貌に惚れこみ、時給250円(のちに255円)という薄給でバイトする助手の横島忠夫と、幽霊のおキヌちゃんがくり広げるギャグ・コメディ・バトルマンガ。『週刊少年サンデー』にて1991年30号から1999年41号まで連載。単行本全39巻の発行部数は7200万部。
なんの変哲もないHな高校生の横島忠夫が美神事務所に入るのは高校2年生の頃です。美神の美しさに惹かれただけで時給はいくらでもいいと言い、結果、255円(最初は250円)でバイトに入ります。ああ、なんという労働基準法違反!
そんな中、とある除霊に絡んだ山に行き、おキヌちゃんという300年前の巫女の幽霊と出会い、すったもんだの末、おキヌちゃんも事務所の一員となってさまざまな霊にまつわる事件を解決していく…というのがこの作品の基本的なストーリーです。
しかし!「美神」の面白さはまた別にあります。それは
時給255円の男が最強になる
という物語です。
1巻で早くも霊能力を見せる横島
横島の力が発揮されるのは意外にも1巻なんですよね。おキヌちゃんと出会った山で悪霊にパワー負けしている美神でしたが、横島が錯乱して
「死ぬならせめてその胸の中で死なせてー!」
と美神の胸をつかんだ瞬間、横島の中に眠る霊力が煩悩として排出されて、一瞬、霊能者並みの力を出して悪霊を撃退します。このときはまだ、偶然的なものでしたが…。
小竜姫の訓練でも片鱗が
「へえ…?手加減したとはいえ、私の刀をよけた…?」
ここなんですよね。小竜姫が横島の中に眠る力を少しだけ感じたのは。それは現実のものとなります。
逆鱗に触れた小竜姫が竜に変身してしまい、
「こんにゃろー!」
と本気を出した横島のシャドウは小竜姫がくり出す「超加速」に追いつきます。このあたりから読者は
「まさか横島、GSになったりするのか!?」
という淡い期待感を持つようになったと思います。私がそうでした。
ついにファンの想像が現実に!「GS試験編」
小竜姫の宿敵・竜神族のメドーサがGS試験会場に部下を潜入させるというストーリーですが、いよいよここから横島の本領が発揮されます。おそらく、このシリーズで横島ファンが爆発的に増えたと思います。
小竜姫から託された「バンダナ」を頭に巻き、GS試験に臨む横島。一回戦では『㈲椎名百貨店』に登場した「九能市 氷雅」が相手。ちちしりふとももに目を奪われた横島はバンダナから膨大な霊力を放ち、氷雅を一撃で場外負けに追い込み、GS資格をついに取得!この瞬間、
「やったぞ横島あああ!!」
と思った読者はどれだけいたことでしょうか!時給255円という過酷なブラック企業で(笑)頑張ってきた横島が報われた瞬間でした。
横島「ま、資格がとれなくなるってのはもったいねーけど 命あってのモノダネやからな・・・」
心眼 「何が言いたい?望みがあるなら相談にのるぞ。小竜姫さまはその為に私をさずけたのだからな。」
横島「ちょ・・・ちょっとムチャな相談でもか?」
心眼「フ・・・・・そうだな例えば・・・「雪之丞をブッ倒す」とかかな?」
横島「わははは!!そいつはたしかにムチャもいいとこだな・・・・!!」
ここですよ!これが横島のその後を決定づけたと言ってもいいエピソードでした。
その後、横島の霊力の源は煩悩のため、覗きとかいろいろなことをして霊力を満タンにし、決勝戦に臨みます。横島の武器は霊力を高めて円盤状にする「サイキック・ソーサー」しかないため、雪之丞の連続霊波砲を防ぎまくり、スキを見てソーサーを武器として投げるという作戦を立てます。
終盤でバンダナが消えてしまいますが、ここでギャグを持ってくるのが椎名流!
「自分を・・信じる・・!?」
「きれいごとぬかしてんじゃねーっ!!この世に自分ほど信じられんものがほかにあるかあああっ!!」
これ(笑)!これでこそ横島です!この言葉好きだなあ(笑)。「自分を信じろ」って親や人は軽く言うじゃないですか。でも実際は自分の力量なんて自分が一番よくわかってるわけで、自分ほど信じられんものがあるか!っていうのは本当に納得しちゃうセリフでしたねえ。
香港編では「栄光の手」を発現
その名も「栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)」!
横島らしからぬカッコイイネーミングセンスじゃないですか。サイキックソーサーが霊波の高まりとともに変化して剣になるという武器で、この技が発現してからというもの、横島の主力武器になっていきます。
「だから、さよならはナシだ!生きてくれ!おキヌちゃん!」
と言って栄光の手を氷に突き立て、おキヌちゃんを蘇生させます。この場面、一番印象に残ってるんですよね~。生き返ったら記憶を全部なくしてしまう。その代わりに肉体がある生活を送ることはできる。気持ちの狭間で揺れる横島は見ていてカッコ良かったですね。
だから作中の女性陣はホレるんだろうなあ。実はスゴくカッコイイ男なんですよね横島って。本人がそれに気づいていないだけで。
チートアイテム「文殊」
「氷」などの一文字で効果を発揮するものもあれば、球のひとつひとつに指定年月日を込め、時間移動を可能にしてしまうというもので、横島はこれで「チート(ゲームで言う『改造ツールを使用してなんでもアリにしてしまう状態』)」的な強さを身につけてしまいます。
神になった菅原道真以降、この「文殊」をつくり出せたのは横島だけです。10年後の横島は文殊を14個も操ることができます。これで未来の横島は時間移動を行い、現代まで飛んできました。
ラストのアシュタロス戦では「飛」と「翔」を組みあわせて「飛翔」という言葉にして空を飛んだりしていました。
恋心と主人公交代
愛する男性と体を重ねると消滅してしまうルシオラと、その事情を知りながら手を出せないまでも、キスだけで戦う決意をする横島。もうこのあたりは完全に主人公が美神から横島へ交代していました。
美神はもうGSとして成長しきっているため、どうしても横島の成長のほうが素晴らしく見えちゃうんですよね。これってストーリーを考える上ですごく難しいと思うんですよ。
成長型じゃない主人公を最初から登場させていると、成長物語ができないためにストーリーを余程練らないと読者に飽きられてしまうと思うんです。
それを横島でついにやったことで、あの時給255円の男がついにここまで来たのかと感慨深いものがありました。中でも一番印象に残っているのは美神との一騎討ちです。
「ルシオラ!おめーに見る目があったってこと証明してやるぜ!」
美神の母、美智恵が横島の修行の仕上げとして戦わせた「プログラミングされた美神」は、じつは本物の美神でした。
「そんな横島クンがいつの間にか私を超えてるなんて…そんな超常現象、認められると思う!?」
そこで交差する2人、次の瞬間、見開きで描かれたのは、横島が美神の攻撃をかいくぐり、美神へ攻撃を当てる瞬間でした。この瞬間、完全に主人公は交代。アシュタロスを倒すまでこのシリーズの主人公は横島になります。
横島は弱くてダメで煩悩たっぷりのただの高校生でした。しかし、物語が進むにつれて明らかになる前世の記憶、美神の下で長く働いたことで力がつき、最終的には助手から主人公にまで成長した彼は、読者の心を鷲掴みにしました。
世界を救う存在にまでなった横島の位置付けは、少年漫画の王道的な主人公・美神がいるからこそ光輝き、ここまで人気が出たのだと思います。
最初に書いたように『ダイの大冒険』でのポップの位置づけですよね。勇者ダイという強い主人公がいて、脇に弱っちいキャラを置き、そのキャラが最終的には主人公以上に強くなるという物語は、鉄板でありながらやはり面白いです。
弱いキャラが強くなる。たったこれだけのことなのに、なぜここまで感動するのか。それは椎名先生のストーリー展開であり、横島自身がギャグ系のキャラなのも大きく関係していると思います。
終盤ではシリアスなキャラになりますし、ギャグ漫画テイストのキャラがシリアスになるっていうのも、これまたグッと来るんですよね。
GS美神の真の主人公はまぎれもなく「時給255円の男」、横島忠夫でした。
だから…!またアニメ化を!いまなら深夜でやれるはず!
「それはない…ないんだよおキヌちゃん!」
というあの言葉を覆す結果を見たい!横島のGS試験編やアシュタロス編まで、『GS美神』の世界を全て描いたアニメが近い将来、実現されることを願っています。
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