吉良吉影の「植物のような平穏な人生」は理想的だがもっとも難しいのかもしれない
2016/12/15
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ジョジョの奇妙な冒険第4部 ダイヤモンドは砕けないに登場するラスボス「吉良吉影」。絶対的な悪だが、彼の人気はとても高い。それは彼が人間臭いからだと思う。
そして人生の目標は「植物のような平穏な人生」を送ることとしている。これは現代の草食系男子などに通ずるものがあると思う。できるなら目立ちたくない、人前で長所や短所を出さず、敵をつくらずに人生を送る。ある意味、究極の人生観とも言えるだろう。
そんな吉良吉影の人間臭いところや人生観を、彼の発言から紐解いていきたいと思う。
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「やめとけ!やめとけ!あいつは付き合いが悪いんだ
「どこかに行こうぜ」って誘っても楽しいんだか楽しくないんだか…
『吉良吉影』 33歳 独身
仕事はまじめでそつなくこなすが今ひとつ情熱のない男……
なんかエリートっぽい気品ただよう顔と物腰をしているため女子社員にはもてるが
会社からは配達とか使いっ走りばかりさせられているんだぜ
悪いやつじゃあないんだが これといって特徴のない……影のうすい男さ」(JC37巻 P10)
吉良の同僚が吉良について発言した内容。ここからはいろいろなことが見えてくる。
吉良は「植物のような平穏な人生」をめざしているため、余計な誘いや自分のプライベートに踏み込んでこられることを極端に嫌う。だから同僚に誘われても自然に断っている可能性もある。ただ、「どこかに行こうぜ」と誘われても「楽しいんだか楽しくないんだか」ということは、一度は遊び、または飲み会などに行ったことがあると受け取れる(酒はたしなむ程度発言あり)。付き合いが薄いと変わり者扱いされるからだ。
子どものころ、「行きたくもないサマーキャンプ」に行っていたり、トロフィーや賞状はすべて3位。つまり吉良は完全に人前から気配を消すというよりは、そこそこの付き合いは行い、自分の長所や欠点は人前に出さない。「目立たないように人生を送る」には、付き合いも自然に行っていないといけないので、同僚からすると「影の薄い男」として印象に残る。
すべて3位を取るだけの『力』はいるわけだし、会社からの使い走りに終始するための能力も必要だ。決して出世せず、かといって降格もしない。生活上のトラブルも抱えないためには、ある程度の一般常識やコミュニケーション能力も要るだろう。
そう考えると、吉良の目指す『平穏な人生』とは、実はもっとも難しい歩み方だと思う。同僚の発言にしたって、吉良の無個性ぶりがかえって『個性』になってしまっているからだ。気配を消していたつもりが、逆に個性として受け取られることもある。
吉良の目指す人生は意外と大変なのだ。
他人からは嫌われず妬まれずバカにされず。常に3位の人生を送る男の哲学は、いまの時代の人にも通ずるものがあると思う。
目立ちたくない、バカにされたくない、ならば植物のように暮らす…というのはある意味、理想の人生に思える。他人と争うことも嫌いだという吉良の言葉に以下のようなものがある。
「『勝ち負け』にこだわったり、頭をかかえるような『トラブル』とか夜もねむれないといった敵をつくらない……というのがわたしの社会に対する姿勢であり、それが自分の幸福だということを知っている……」(JC37巻 P74)
「激しい『喜び』はいらない…そのかわり深い『絶望』もない…『植物の心』のような人生を…そんな『平穏な生活』このわたしの目標だったのに……」(JC45巻 P185)
「『闘争』はわたしが目指す『平穏な人生』とは相反しているから嫌いだ…ひとつの『闘い』に勝利することは簡単だ…だが次の『闘い』のためにストレスがたまる……愚かな行為だ」(JC45巻 P191)
とかく現代社会は激しい喜びや深い絶望が時としてあったり、闘いをしなければならないという場面がある。しかし、この考えは平穏な人生を送りたいと考えている人にとってはまさに教科書のようなセリフだろう。
ただし、これらの言葉を現実にするために必要なものがある。それは
高い能力と知性、そして強さ
吉良はキラークイーン発動前も発動後も、目立たないように人生を送ってきていた。しかしスタンド能力に目覚めてからはさらに強くなった。
「もっとも闘ったとしても、わたしは誰にも負けんがね」(JC37巻 P74)
これはなかなか難しい。平穏な人生と強さは一見相反する事柄のように見えるが、平穏であるためには強くなければならないというのも皮肉である。
人の個性とは、そう簡単に消せるものではない。自分がいくら気をつけていても、ちょっとしたことが「個性」となり、それが注目される機会もあるからだ。普段からマジメに仕事をし、使い走りばかりやっていたとしても、それが評価されたとき、社内では目立つ存在となるかもしれない。
吉良はそれまでそうした部分を消していたが、人間臭さも多分に持っている。結構ポカもしているのだ。
- サンジェルマンのサンドイッチの袋に手首を入れておいたら、重ちーに持ってかれる
- 服のボタンが取れたことを不審がらずに普通に修理に出して正体を探られる
- 川尻家にて、家賃問題で追い詰められる(金庫の番号を知らない)
- 筆跡を練習しているところを早人に見られる
- 猫草を隠していることが早人にバレる
- 風呂場で追い詰められて早人を始末して絶望感MAX
- バイツァ・ダストで完全勝利目前だったのに、自分の名前を言ってしまって仗助に正体がバレる(自分の名前を喋ることは運命で決定づけられていたが)。
足跡を完全には消せず、見落としてしまったり、意外なところから正体がバレたりと、吉良は完璧に見えてあまり完璧ではなかった。そこが人間臭かったし、だからこそ人気も出たと思う。おそらく絶対的な悪だったら、人気はそこそこだったのではないかと思うのだ。肝心なところで気を抜いたりしてしまうところがリアルだったし、完全犯罪はそんな簡単じゃないということが、吉良の行動からもわかる。
余談となるが、作者の荒木飛呂彦氏がもっとも好きなキャラとしてこの吉良吉影を挙げている。短編集「デッドマンQ」では、あの世の吉良が死神のようなことをやっている。
こういったスピンオフ作品を発表できるキャラクターというのは、作者にとっても思い入れが深いからだろう(岸辺露伴も短編集が出ている)
岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)
ジョジョの歴代ボスの中でもっとも人間臭く、もっとも悪だった吉良吉影。彼の人生哲学は見習うべきところも多い。
関連リンク
▶【ジョジョ100選】吉良吉影の平穏とは程遠い名言・名セリフ100選【キラークイーン】 | festy(フェスティー)
▶吉良吉影の最期。その後どうなった?(ジョジョの奇妙な冒険)
▶吉良吉影ってジョジョキャラで一番の傑作キャラじゃね???? | ジョジョ速
▶吉良吉影とは (キラヨシカゲとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
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