【NOAH】元旦の奇跡は伝説の継承へ…ムタvsNAKAMURAを紐解く
1月1日 元旦、
プロレスリングノアでグレート・ムタとシンスケ・ナカムラの一騎打ちが行われました。
試合はとんでもない奇跡の連続。
「グレート・ムタが僕のアイドルでした」と語った中邑。プロになってからは「競争相手」と思うようにして感情を押し殺してプロレスラーとして生きてきたと語る中邑でしたが、彼はそういった感情も含めて戦っていたいたように思いました。
セミファイナル(ダブルメイン1終了後)、明らかに空気が変わりました。これから始まる究極の奇跡に向け、観客のワクワク感と期待感が交差する素晴らしい空間に変化していきました。
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試合は両者ともにアメリカで成功した新旧の日本人スーパースター同士の戦い。ムタも近年まれに見る動きの良さで中邑を圧倒しました。毒霧を何発も吹き、フラッシングエルボーやドラゴンスクリューからの足四の字やシャイニング・ウィザード。その光景は2008年のあのIWGP戦を彷彿とさせました。
そう、武藤敬司と中邑真輔を語るときにどうしても外せないのが、2008年にIWGPヘビー級ベルトを賭けて戦ったあの一連の流れです。
当時、中邑はまだそれほど期待を受ける存在ではありませんでした。武藤と中邑が戦うと言った時、誰もが
「武藤!IWGPを絶対に中邑から取ってくれ!」と誰もがそう思ってましたし、僕も思ってました。あの頃の中邑真輔はまだ現在のようにクネクネ前であり、ボマイェも開発してはいませんでした。あの当時の必殺技はランドスライドでしたし、結構、中途半端な存在だったんですよね。だからファンからの支持も集まりにくかった。
そこに武藤敬司が挑戦してくるっていうだけでファンの支持は一気に武藤に集まりました。
試合もそうです。シャイニング・ウィザードを何発も食らって立ち上がってくる中邑ではありましたが、会場の8割方が「武藤勝ってくれ!」という思いの中で中邑はIWGPを取られました。その後の2回目の挑戦でも、カウンターのフランケンシュタイナーで正面から負けてしまいました。
結局そのIWGPは2009年1月4日の東京ドームで棚橋弘至が取り返すわけですけども、中邑は対武藤戦の成績は
0勝2敗
完膚なきまでに叩きのめされたといった表現が正しいでしょう。ですから前日の記者会見で中邑も「あのときはほろ苦い体験をしました」という表現を使ったんだと思います。
2009年から中邑はボマイェを使い出し、脱力してクネクネするようになりました。そこからです。彼が一気にブレイクしたのは。G1を取り、インターコンチネンタルを奪取してIWGP ヘビー級にも挑戦し、インターコンチネンタルを IWGPよりも上の価値まで持って行って、2014年の東京ドームではインターコンチがメインイベントに抜擢されました。
2016年1月、新日本を退団した中邑はアメリカのWWEに所属します。そこでも一気にスーパースターに躍り出て日本人レスラーとしては初めて本名での活躍を認められます。
普通、日本人レスラーが海外の団体に所属すると歌舞伎や忍者スタイルなどのキャラクター変更が求められてきました。しかし中邑はこれまでとは違い、名前の変更もなく、本人そのままのスタイルで活躍させてくれました。こんな日本人レスラーは中邑真輔が初めてでした。
そして2023年1月1日。日本からアメリカに旅立ったスーパースターが凱旋したのです。
一番の見所は最後。なんと中邑はムタの口から直接毒霧を吸い取り、それを逆に噴射してからのキンシャサ!
誰も考えつかなかったムタの毒を自ら注入してからの掟破りの逆毒霧。中邑はこれでムタの遺伝子をも受け継いだのかもしれません。魔界のエキスを自分に取り込んだ中邑は、さらにプロレスラーとしての階段を登ってしまいました。
試合後、中邑は
「バイバイ マイアイドル ムタ」
と言い、花道を下がるムタに肩を貸して退場します。ラストは2人そろってイヤァオと毒霧の饗宴!
ここまでの作品があったでしょうか。
プロレスは点ではなく、線で語るべき。僕はそう思います。これまでの2人の思いやリスペクト、プロレスを「作品」と称する武藤敬司と「アート」と表現する中邑真輔。
15年前にボロボロに負けた中邑が時を経てリング上にアートを描き、ムタが
世界観を創り上げ、新旧2人のスーパースターによる夢のプロレスは幕を閉じました。
この試合は今後ずっと語り継がれていくことでしょう。めったに選手を貸し出さないWWEが中邑を派遣し、ムタの引退に華を添える。さまざまなタイミングが重なって生まれた「元日の奇跡」。
アーティストと魔界の住人が魅せた一夜の夢物語を我々は語り継いでいこうではありませんか。
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▶【ノア】中邑真輔がグレート・ムタの口から毒霧吸い尽くして噴射「キンシャサ」で3カウント奪う - プロレス : 日刊スポーツ
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